2016年08月11日

科学祭を考える(2);日本の科学祭の一覧と栄枯盛衰

 科学祭について考える5回シリーズ、その第2回は日本の科学祭の一覧と現状、近年の実状に関して整理します。
 第1回でも少し触れた通り、その出自は様々ですが、地域の町興しや科学と他の文化との交流及び融合の流れは、脈々と続いています。

1)現在動いている科学祭一覧
 全てを列挙することは出来ませんが、現段階でのにわか調査で把握している限りのものを列挙します。

CISE サイエンスフェスティバル(北海道札幌市)
はこだて国際科学祭(北海道函館市)
科学フェスティバル in よねざわ(山形県米沢市)
学都「仙台宮城」サイエンス・デイ(宮城県仙台市)
つくばサイエンスコラボ(茨城県つくば市)
千葉市科学フェスタ(千葉県千葉市;こちらも参照)
東京国際科学フェスティバル(東京都をはじめとする首都圏全域)
かながわサイエンスサマー(神奈川県)
山梨プラネタリウムフェスティバル(山梨県甲府市)
しずおか科学技術月間(静岡県;こちらも参照)
あいちサイエンスフェスティバル(愛知県)
ぎふサイエンスフェスティバル(岐阜県;こちらも参照)
みえサイエンスネットワーク(三重県)
やましろサイエンスフェスティバル(京都府)
わくわく科学フェスティバル(岡山県)
呉高専おもしろ科学体験フェスティバル in 広島(広島県)
下関サイエンス・フェスティバル(山口県下関市)
かがわけん科学体験フェスティバル(香川県)
科学体験フェスティバル・ミラクルワールド(徳島県)
愛媛大学工学部・科学体験フェスティバル(愛媛県)
都城高専・おもしろ科学フェスティバル(宮崎県都城市)
かごしまおもしろ科学フェスティバル 青少年のための科学の祭典 鹿児島(鹿児島県)

2)栄枯盛衰
 現存する科学祭のうち、筆者が知りうる限り最古のもので、「青少年の科学の祭典」を冠しない、地域の独自拠点を持つものは、茨城県つくば市の「つくばサイエンスコラボ」です。1985 年に開催された国際科学技術博覧会(科学万博・つくば '85)の開催 10 周年を記念して「つくば科学フェスティバル」として実施されたのが始まりで、その後 2011 年から環境系のイベント「つくば環境フェスティバル」「つくば 3E フォーラム」を併催するようになり、現在の複合的な型式になりました。
 同時期に始まった福岡県の「フクオカサイエンスマンス」は、残念ながら 2015 年度限りで終了しています。経緯は未詳ですが、主催の福岡県商工会と、事実上統括していた現地の NPO 法人との間に、何かあったのでしょうか。

 各地の科学祭の中には、国策による財政支援を受けて始まったものも少なからずあります。科学技術振興機構(JST)の科学コミュニケーション連携推進事業「地域ネットワーク支援型」を受けて始まったものもあります。採択企画の一覧を書きに挙げておきますが、概要や報告書は JST 公式サイトのこちら、及びそこからのリンク先で見ることが出来ます。

<一覧ここから>
[08 年度]
・公立はこだて未来大学
 国際交流都市函館の地域ネットワークを活かした科学文化の醸成
・福島大学
 地域の自然と文化と科学にふれて学ぶ「ふくしまサイエンスぷらっとフォーム」の構築
・静岡大学
 ものづくり理科地域支援ネットワーク:浜松 RAIN 房
・神戸大学
 ひょうごサイエンス・クロスオーバーネットの構築を通じたサイエンスコミュニティの醸成
・鳥取大学
 地域の科学技術理解ネットワーク構築とリーダー養成プログラム−ものづくり道場の創設−
・山口大学
 長州科楽維新プロジェクト 〜山口県に科学を楽しむ輪を広げよう〜

[09 年度]
・山形大学
 やまがた『科学の花咲く』プロジェクト
 〜「科学の花咲かせ隊」養成および新たな科学体験手段・機会の創出〜
・新潟大学
 巻き起こせ! コメッセ ムーブメント
・産業技術総合研究所
 ジオネットワークつくばの構築:環境モデル都市とジオパークを目指して
・国立天文台
 東京サイエンスネットワーク−地域の絆を世界の絆に−
・奈良女子大学
 まほろば・けいはんな科学ネットワーク
・和歌山工業高等専門学校
 きのくにものづくり人材育成支援ネットワークの構築

[10 年度]
・松江工業高等専門学校
 神話の国シマネの縁結び(ENMSB)ネットワーク
・九州大学
 Science for All Fukuokans ネットワーク(SAFnet)の構築 〜「サイエンスモール in 福岡」〜
・香川大学
 目指せ未来の平賀源内「かがわ源内ネットワーク」

[11 年度]
・名古屋大学
 あいちサイエンス・コミュニケーション・ネットワークの構築
・沖縄工業高等専門学校
 ALLやんばる 科学と教育のまちづくり

[12 年度]
・北海道大学
 科学系博物館・図書館の連携による実物科学教育の推進
 〜CISE(Community for Intermediation of Science Education)ネットの構築〜
岩手大学
 復興教育と協調したポスト3.11 型科学人材育成のための「未来をつくるイーハトーブサイエンスネットワーク」の構築
・帝京大学宇都宮キャンパス
 栃木の自然と先端技術に学ぶ「サイエンスらいおんプロジェクト」
・岐阜大学
 清流の国 ぎふエネルギー・環境科学ネットワーク

[13 年度]
・旭川医科大学
 自然と健康のハーモニー“大雪(たいせつ)” 〜自然と子どもと健康〜
・宮城県& NPO natural science
 「科学・技術の地産地消モデル」構築による、持続可能な学都「仙台・宮城」サイエンスコミュニティの形成〜知的好奇心がもたらす心豊かな社会の創造にむけて〜
<一覧ここまで>

 それぞれの一覧の成果やその後の推移を見ると、当初から科学祭を必ずしも志向していないもの、科学祭を始めてからその流れが途絶えてしまったもの、ほぼ計画倒れだったものも少なからずあります。とはいえ、プロジェクトを継続的な取り組みにしていくことはどだい易しいことではなく、助成金頼りの運営では助成金の獲得が切れたら終わりという危うさもあります。
 元々、この JST の助成事業は3年間の助成を経て地域社会の中で持続可能な科学振興の仕組みや拠点を作ることを狙いとしたもので、その科学振興の装置の一部が科学祭という位置づけでした。しかしながら、左記の仕組みや拠点としてのネットワークを作り、継続的に機能させるには、人材、資金、体制の維持や管理という、およそ法人であれば常に考えていなければならない問題点があり、中にはその完成に至らなかった事例も多くあります。
 具体的に見れば、神戸、新潟コメッセ、ジオネットワークつくば、奈良女子大のまほろば・けいはんな、和歌山、松江、岐阜、九州 SAF-Net、沖縄工業高専は苦戦又は縮小ないし機能停止、旭川、山形、福島、浜松、宇都宮、山口は地道に継続(宇都宮は科学祭事業を停止)という感じです。

3)意義の裏にある問題点
 各地の科学祭がそれぞれ展開する内容には、地域的事情の反映による特色や個性がありますが、その一方で、やはり地域的事情や個々の運営母体の特性による持続可能性の難易差がどうしてもあります。
 様々なセクタの関与による相互交流や連合体の形成による新たな文化の創成という意味づけがある一方で、その相互交流や連合体の形成及び管理運営となると、異なるセクタそれぞれの文化や内部事情の影響がどうしてもあり、拠点となる担い手が調整役としてその手腕を発揮する上で、関係作りをどうしていくかがどうしても肝要になります。
 そして、科学祭の実施拠点それ自体も何らかの組織であり、経済現象から自由ではありません。即ち、人・モノ・カネの問題がどうしても付いてまわります。
 更に、関係作りや場作りを進めていく上で、個々の企画の参画者のクレジット保障(主催、協賛、後援、企画参画、スポンサーなど)や、運営そのものの公正性の問題(各種の利益相反問題や財源確保の手続きの問題など)も気になります。
 加えて、筆者が東京国際科学フェスティバルの実行委員として、各地の科学祭主催者に対して行った小さな予備的調査(関連する話を第5回で後述)から分かったことが一つあります。各地でこうした科学祭の運営拠点をになう組織や、科学祭の事業それ自体は、その担い手個々人の所属先や、所属を離れた場に於ける、隙間時間での準備や運営を余儀なくされることが多く、その担い手が組織やチームの中で孤立しがちな場合が多いのです。
 そうした中で、地域社会における文化事業としての科学祭がどうして続いているかというと、その拠点を担う個々人の情熱や使命感が大きな駆動力になっており、連携先でのつなぎ役になってくれている方も大小の裁量を持つ個人レベルであることが多く、個々人の所属する法人や自治体等の人事異動や任期の影響に左右されながらも、どうにかその仕組みをつないでいるというのが実状です。
 そうした「人材面でも、資金面でも不安定な拠点が、どうにか組織や地域の有力者との関係を紡いで、どうにか作った関係に特別な文脈を付与し、どうにか走らせ続けている」のが実態で、拠点そのものが財政的にも人材的にも安定という事例は極めて少数です。それでもなお、個々人の情熱と、情熱を持った人同士のつながり、そのつながりがもたらす魅力や意義が、場としての科学祭を動かし続けているのです。

 第3回では、日本の科学祭の源流としての、博覧会や見本市を概観します。
posted by stsfwgjp at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック