2015年11月09日

「本音で語る研究費問題」田原さんのトーク要旨

 今年のサイエンスアゴラ・研究問題ワークショップ「本音で語る研究費問題」にて、前半のトークセッションにお2人のゲストをお迎えします。
 そのうちのお1人、未来工学研究所田原敬一郎さんの話題提供の要旨をご紹介します。ご本人よりご恵与頂いたものを、そのまま公開します。

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「科学技術と社会との関係」からみる研究資金配分政策の潮流と課題

 本講演の目的は、後半のワークセッションでの議論に資するために、日本を含めた先進諸国における研究資金配分政策の潮流について、「科学技術と社会との関係」に着目して整理を行うとともに、こうした潮流を踏まえ、これからの政策側及び研究者側に求められるものは何かについて、研究コミュニティの外にいる立場から問題提起を行うことにある。
 S.カズンズは、第2次世界大戦後の米国の科学技術政策の特徴を、「科学に関わることは科学コミュニティにまかせておくことが社会に対して最も効果的に便益をもたらす方途であるとする勢力」(繁栄の自治派)と、「科学であっても公的支援を受けるからには説明責任を果たすべきである(投資に対する価値を示すべきである)と考える勢力」(説明責任派)との拮抗の歴史として描いたが(Cozzens 2001)、税収の減少や財政危機等を背景に、先進諸国では後者の立場を重視せざるを得ない状況になってきている(福島・田原2013,田原2014)。各国において、「需要側」、「ニーズ牽引」といったキーワードが2000年前後から頻出するようになったり、公的研究開発の優先順位付けや重点化のあり方に関する議論が活発化したのはその典型である。
 研究資金配分政策もこうした流れに呼応する形で変化してきている。具体的には、機関単位で経常的に配分される一般大学資金の占める割合が減少し、政策ニーズに対応する形で配分される直接政府資金が増加するようになった。また、その配分方式として競争的資金が重視されるとともに、研究実施能力を有する拠点の識別が図られ、個人やチームをベースとする競争的資金から機関や組織を単位とするそれへと重点がシフトしてきている(小林2011,標葉・林2013)。
 こうした潮流を踏まえ、日本における資金配分政策にはどのような構造的な問題があるのか、また、研究者はどのように変わる必要があるのか、そして、政策側と研究者側が適切に責任を果たすための資金配分政策はどうあるべきかについて、「評価」という社会とのコミュニケーションツールに着目して問題提起を行う。

参考文献:
Cozzens, S. (2001) Autonomy and Accountability for 21st Century Science, Science, Technology and Governance,Mothe (ed.), pp.104-115, Pinter.
小林信一(2011)「研究開発におけるファンディングと評価−総論−」『国立国会図書館調査報告書国による研究開発の推進―大学・公的研究機関を中心に―』, 149-173.
標葉隆馬,林隆之(2013)「研究開発評価の現在‐評価の制度化・多元化・階層構造化」『科学技術社会論研究』10: 52-68.
福島真人,田原敬一郎(2013)「「科学を評価する」を問う−特集にあたって」『科学技術社会論研究』10:9-15.
田原敬一郎(2014)「10 公共政策学」山下晋司編『公共人類学』,東京大学出版会.

<ここまで>
posted by stsfwgjp at 22:26| Comment(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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