2015年09月22日

研究費問題(3);民間の研究費

 今年のサイエンスアゴラ・研究問題ワークショップ「本音で語る」では、研究費の問題を取り上げます。
 例年同様、問題群の背景や構造を、私見と腕力の許す範囲で、大雑把に整理してみたいと思います。
 今回はその6回シリーズの3回目です。

 第3回の今回は、政府各省庁や各種国研(NEDO や AMED、NIMS 等)、科学技術振興機構(JST)以外の機関が用意している、民間の研究費について考えます。

1)民間研究費の例
 民間でも研究費助成を行っている企業及び財団などは、その一部を列挙するだけでもこんなにあります。

大川情報通信基金
・公益財団法人立石科学技術振興財団 研究助成(A)(B)(C)
武田科学振興財団
向科学技術振興財団
双葉電子記念財団
テレコム先端技術研究支援センター(SCAT)

国際科学技術財団
稲森財団
・公益財団法人日本科学協会 笹川科学研究助成
サントリー生命科学財団
・株式会社リバネス リバネス研究費

内藤記念科学振興財団
公益財団法人ファイザーヘルスリサーチ振興財団
・グラクソ・スミスクライン株式会社 GSKジャパン研究助成
・武田薬品工業株式会社
 医薬研究本部 研究アライアンスグループ  研究公募プログラムCOCKPI-T(コックピット)
ノバルティス科学振興財団

トヨタ財団 公益助成プログラム
旭硝子財団
公益財団法人クリタ水・環境科学振興財団
加藤記念バイオサイエンス振興財団
花王芸術科学財団
LIXIL住生活財団 若手研究助成
矢崎科学技術振興記念財団

野村財団
公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団
・住友信託銀行 募集案内一覧(奨学金・研究助成金等)

 各大学でもその膨大な一覧をまとめて公開していますが、早稲田大学UMIN の例を挙げておきます。

2)民間研究費の規模(独自資金と助成金交付)
 実は、日本の研究費の総額にしめる企業研究費の割合は、国や地方自治体のそれを大きく上回る事実があります。

 総務庁統計局の「統計で見る日本の科学技術研究」(平成 26 年版)によると、企業、大学等(各種の独法研究機関を含む)、非営利団体及び公的機関の3つの研究主体の研究費の経時推移は、圧倒的に企業のそれが多く、1994(平成6)〜2013(平成 23)年の間で研究費総額を比較して、企業の研究費総額は大学等の3〜4倍で推移しています。2013 年の金額で、企業の研究費総額は 12 兆 9,620 億円、大学等は 3 兆 6,997 億円です。

 しかし、企業研究費の殆どは自社調達で、学部資金として大学などに供出している金額は総額の2%あまりです(こちらを参照)。それでも、2010(平成 22)年当時で、大学などに拠出された研究費の総額は 3,453 億円。国立大学の運営費交付金の総額1兆円余り、科研費の総額約 2,000 億円、私立大学の私学助成金総額 3,000 億円余りと比べても、総額としてかなりの金額になります。

3)民間研究費の功罪
 民間企業及び企業が併設する財団による研究助成と、民間企業が大学等と共同研究及び寄付など資金供与する場合に、分けて考えます。

 民間研究助成の拡充や在りようの改善を求める声は、小さいながらもあります。
 だいぶ古いデータになりますが、1991(平成3)年(...w)に発表された調査報告で、「日本の民間研究助成の現状と問題点」と題する文献があります。オープンアクセスで誰でも読めます。その主な論点を一部拾ってみると、以下の通りです。
・民間研究助成の持つ意義は、第1に民間公益活動(フィランソロピー)、第2に多元主義、第3に研究資金源の多様化。
・科研費の比較で云うと、科研費は採択率や使途の制限などの限界があるが、民間財団では私立大学への支給が厚めで、使徒も多様である。しかしながら、国立大学、特に旧帝大に支給される比率は高い。
・科研費は全ての学問分野を対象とするが、民間助成は自然科学の応用研究及び開発に支給対象が偏っている。医学や工学に対する支給が厚めで、基礎科学や人文社会系は比較的手薄である。
・助成1件あたりの支給額の大半が 250 万円以下と、比較的少額である。
・科研費獲得実績のない人も、多くが助成金を得ている。
 古い文献ゆえ、現状と合わない面もありますが(例えば使途の制限や対象範囲など)、現在の情勢と照らし合わせて、そう大きく外していない論点もあると思われます。筆者からどれが?とは敢えて申しません。

 他方で、企業側の研究開発費を大学との共同研究に供している事例も少なからずあり、企業の研究部門が大学及び国研と共同研究を行ったり、大学に寄付講座を設置したりする事例も増えてきています。大学側の研究活動を活発化してきている一面もある一方で、大学にとっての学問の自由をどう維持していくか?という学問的自治の問題や、研究成果の発生に伴う知的財産権の管理や運用という新たな問題群の発生、利益相反問題など、新たな悩みの種も出てきています。
 利益相反に関しては、大学等の側も手を打っている場合が増えてきています(東北大東大九州大の例を挙げておきます)。しかし、昨今発覚した各種の研究不正の中に利益相反が関係する事例(ディオバン問題タシグナ問題J-ADNI 問題)があったり、処方薬タミフルにまつわる利益相反の案件があったりなど、研究公正の維持において難しさを感じさせる事例もあります。

 民間の研究費だからといって、直ちに学問的自治や利益相反、知財問題などで大学に悪影響があるというものでもないでしょう。大学の研究費や運営財源の多様化(基金の収入源多様化を含む)は、大学自身の持続可能性を考えれば、必ずしも悪いことではないでしょう。しかし、左記のこうした問題を生じうる実状と、実際に発生した問題を直視しながら、どのように民間の研究資金を獲得し、また社会とどのように相互作用しながら財源と「対外的な知と人の供出」を維持していくかを考えていくことは、今後重要になっていくと思われます。

 シリーズ第4回に続きます。
posted by stsfwgjp at 23:00| Comment(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: