2014年09月20日

今年もサイエンスアゴラに出展

 例年、これ以外では余り動いていない有志一同ですが、今年もその「これ」の時期になりました。
 担い手一同の面々には変遷がありますが、追いかけている根幹の主題は一貫して同じです。
 そして、今年取り上げるテーマに関しては、去年の本番当日の頃から、構想を温め始めて、少しずつ準備を重ねてきました。そして、後述しますが、実は一度取り上げているテーマです。

 今年も、科学コミュニケーションの見本市、サイエンスアゴラがやってきます。
 今年も、そのサイエンスアゴラに、研究問題をテーマにしたワークショップを出展します。

 今回のテーマは、研究不正問題にしました。

 昨今、医薬品開発をめぐるデータ改ざんや利益相反、理研の STAP 騒動や東邦大医学部の大規模捏造事件など、科学研究の世界でのスキャンダルが相次いでいます。実はこうした傾向は世界共通で、世界でも科学コミュニティに衝撃をもたらす事件が立て続けに起こっています。
 実は我々は、8年前の第1回サイエンスアゴラでも研究不正の問題を考える企画を持ちました。折しも、韓国ソウル大学のファン・ウソク事件や、米国ベル研究所のシェーン事件、日本の東大分生研での捏造疑惑や早大理工学部での研究費不正事件など、世間を騒がせた大事件が相次いだ頃でした。その不正事件の諸々と向き合う途上で、研究者業界の抱える悩みも明らかになってきました。
 日本の研究者業界を取り巻く環境は、往時から今に至るまで、厳しい状況にあります。研究費の獲得を巡る激しい業績競争と、研究費の運用の単年度制に伴う各種の不便が、研究費不正や研究不正の直接間接の要因になっているという話は以前からありました。他方で、公正な研究への取り組みも各種のスキャンダル発覚前後から、学術界で盛んに取り組まれ、学術界内外への発信という形で取り組みが積み重ねられてきました。
 研究者が置かれた研究の現場の状況も、久しく厳しい状況にあります。特に若手の置かれた状況は厳しく、生命科学の分野ではことに顕著で、発覚している研究不正の多くは生命科学系です。国策として推進されたポスドク1万人計画の余波として発生したポスドク問題の実状として、現在 16,000 人余りいるポスドクのうち約4割は生命科学系です。大型研究予算のプロジェクト雇用で雇われている任期付きのポスドクや若手研究者の数は多く、しかし研究以外の分野への転身が厳しいという状況は、生命科学系の若手研究者のキャリア形成にとって大きな問題となっています。そうした中で、あの理研 STAP 騒動があり、東大分生研の案件が2件あり(こちらこちら)、また、医薬品開発を巡る研究不正が続きました(ディオバン問題タシグナ問題J-ADNI 問題)。無論、こうした不正は生命科学の分野に多いとは言え、それに限ったことではなく、他の分野でも東北大工学部での二重投稿問題東大工学部の宇宙エレベータ研究での剽窃や経歴詐称東工大の材料科学分野での捏造事件など、列挙すれば相当数にのぼります。
 第1回のサイエンスアゴラで研究不正、研究費不正の問題を取り上げてから8年。その間も、研究不正事件は絶えることがありません。研究費の運用に関しては、科研費の基金化など一定の改善を見ました。大学や学会、研究機関のレベルでの研究公正への取り組みも大分増えて、その内容は公表されています。実際に不正行為を犯す者は相対少数で、不正行為は一部のトンデモな輩のやらかすものであるという意見は研究者業界の中に根強く、不正行為と単なる間違いとを混同する向きも一部にあります。ただ、誠実な研究への取り組みに対する意識の欠如や、過失的なヒューマンエラーが不正に結びつく場合もあり、その意味では不正事件と大小のヘマは地続きとも言えます。

 今回改めて、一連の不正事件とその背景を整理し、再発防止策に関する取り組みへの批判的検討を含めて、この8年間の動向を整理したいと思います。そして、それらを踏まえて、誠実な研究をすることを大切にし、誠実に研究することに対するインセンティブをどう作っていくのかに関して、皆で本音で考えて行きたいと思います。

 その議論のための準備になりそうな話題を、これから3回に分けて挙げていきます。
posted by stsfwgjp at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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