2013年08月02日

動物実験、何が問題なのか(2);賛成派、反対派の対立

 今年のサイエンスアゴラ出展企画「本音で語る生命倫理--動物実験なぜ必要?なぜ反対?」に関連して、その背景となる事柄を、4回にわたって整理したいと思います。今回はその2回目です。

 多くの市民団体や有志、個人などが、動物実験に対して反対ないし批判の声をあげています。
 ざっとその一部を挙げるだけでも、これだけ沢山あります(順不同;反社会的行為を明確に支持するものは除きました)。但し、以下の各サイトが全て一様且つ単純に動物実験に反対しているわけではないことにご留意下さい。

動物実験の廃止を求める会(同会のキャンペーン「ウサギを救え」)
地球生物会議 ALIVE(現在は動物実験廃止・全国ネットワーク(AVA-net)がこれと合併)
アニマルライツセンター(同会のキャンペーン「動物実験はいらない」)
横浜アニマルファミリー
uls 動物実験反対同盟
ヘルプアニマルズ
全ての生命を尊ぶ会
動物実験の法規制を求めるサイト
動物実験の法制度改善を求めるネットワーク
楼猫(サイト内に「動物の権利」)
ホームレス猫 繁殖防止基金(同会のサイト「動物実験に法規制の必要性」)
さよなら、じっけんしつ -脱・動物実験をめざす情報サイト-
空のブログ(動物愛護・アニマルライツとは)
わんのはな
動物実験に手をかさないで!
幸三郎ブログ(例えば、「動物実験賛成って事ですか?」「動物実験賛否両論」など)
LIFE Journey 第36号・動物実験
三橋規宏のホームページ・SOS 地球号
ノーマン・テイラー邦子ブログ「動物の権利と福祉」

 主要な論点を整理すると、概略以下のような感じです。

・不必要に残酷な実験を数多くやっている割には、それが人間にとって殆ど役立っていない。
・人間と他の動物は生理的に異なる点が多く、動物実験での結果を人間に敷衍できないので意味がない。
・動物実験は研究者と産業界にとって、名誉とカネをもたらす巨大産業システムの基盤であり、動物たちはその犠牲になっている。
・医学や獣医学の基礎訓練において、生きた動物を用いた実験は、訓練の受け手に無駄な苦痛を強いる割には、技術取得や理解増進の面で大して効果がない。
・捨てられたペットを動物実験用に供して、残酷な実験をしている事例が多い。

 ただ、その内容に関しては温度差がかなりあります。
 例えば、動物実験に対する反対の立場は明確でなくとも、その規制を必要だと訴える声もあります。同じ動物実験反対の言説でも、何らかの思索を重ねて反対の立場にたどり着いたものもあれば、学術的なことに対する理解は浅くとも、強烈な体験や思いの丈から反対の立場を取っているものもあります。

 他方で、動物実験に反対する見解に対する批判も、以前から幾つかのパターンがあって、大なり小なり説得力をもつ内容だったりします。例えば、俄かに思いつく範囲でも、以下のようなものがあります。

・ネズミやモルモットを殺すのはかわいそうだというけれど、イカやタコ、バッタなどは良いわけ?
・人間も動物だけど、殺しはせずとも人間で実験(治験)せずに医学や薬学の進歩はありうるのか?
・人間は動物の一種。食物連鎖の網の中に人間も居て、動物や植物を食べて生きている。その時に動物を殺して食べているわけだが、食べるために殺すのは良くて、実験で殺すのがダメな理由はあるのか?
・反対している貴殿が勝手に不気味がっているだけでしょ?
・研究者は実は動物の生命を大切にしているが、反対運動家たちはそのことを理解していない。
・動物実験を用いた研究や教育の現場の実態を知らずに反対運動をしている。

 他にもありうると思います。度忘れもあるかもしれません。
 具体的には、こんな感じでやはり沢山あります。一部を以下に列挙します。

へそ曲がり獣医のホームページ(サイト内の「アメリカ実験動物学会・動物実験に関する質疑応答集」も必読)
Concerns on Laboratory Animals
さんかくの野良猫餌やり被害報告(サイト内に「動物実験」の記事あり)
ブタにダイヤ☆(サイト内に「伊藤園、動物実験廃止…微妙な問題」;動物実験反対の立場の方々によるコメントは必読)
新日本科学の実験動物愛護理念(pdf 形式)
日本学術会議「動物実験に対する社会的理解を促進するために(提言)」(pdf 形式)
島根大学・NPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA)からの生理学実習における動物実験に関する要望書への対応について(→ JAVA 側からの問題提起コメントも参照。)
医学研究における動物実験の必要性について - 神戸大学 医学研究科
高校の実験を動物愛護団体が廃止!これは正しいの…?(Togetter のまとめ記事。JAVA による申し入れの記事を「でっち上げ」と評しています。とは言え、苛烈な運動にひどくお疲れでもあるようです。)
動物愛護団体に言いたい
(罵詈雑言の類多数ですが、その一方で問題の深層を鋭く突いている箇所も一部にあります)

 中には、動物実験反対運動をテロ呼ばわりする過激な論調さえあります(例えばこちら;この記事の著者は、必ずしも実験動物福祉に反対しているわけではなく、むしろその重要性をよく認識している方です)。無論、その過激さゆえに反発もあります(例えば、こちらなど)。

 それぞれをつぶさに見ていると、一見バトルロイヤルのようなぐちゃぐちゃの状況にも見えます。
 ただ、整理してみると、見えてくるものも幾つかあります。

 よくよく見比べてみると、実は動物実験反対派と、(推進の立場を明確にしているか否かを問わず)理科教育や科学研究の現場の方々との間では、「動物のいのちを大切にしたい」という根っこの部分の思いは、内容や程度、形式の違いこそあれ、同じ方向を向いているように思えます。
 そして、動物実験反対派(のうち、形はどうあれ対話を試みている方々)も、理科教育や科学研究の現場の方々も、人類や動物の幸福に、やはり内容や程度、形式の違いこそあれ、思いを馳せていることが分かります。

 では、何が対立を引き起こしているのか。
 それぞれの立場の方々が「動物実験の定義をどう構えているのか(或いはその定義を明確にして議論しているか)」、或いは「動物実験をめぐる諸々の、何に対して違和感や拒否反応を持っているか?」の違いが、その対立の源泉になるように思われます。

 動物実験の思想的背景に関しては、こちらのページが参考になると思います。
 残念ながら、思想的にさほど広く深いとは言いがたい動物実験運動ですが、その国内外の歴史と併せて、倫理学の観点からよく整理されているように読めます。件のページの著者による「動物からの倫理学」という著作もあり、この1冊で思想的背景を把握するには充分でしょう。

 第3段では、動物実験そのものの光と陰に向き合います。
posted by stsfwgjp at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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