2016年08月13日

科学祭を考える(4);世界の科学祭ネットワーク

 科学祭について考える5回シリーズ、その第4回は世界の科学祭ネットワークを紹介します。

 第1回でも少し触れましたが、現在の形の科学祭は英国で生まれ、世界各地に少しずつ広まっていて、典型的なものは英国、米国、日本、中国、豪州などで見られます。
 今回は、英国と米国における、科学祭の担い手同士をつなぐ互助組織を紹介し、そこからその2ヶ国の科学祭の実状を垣間見たいと思います。

1)英国
 さて、科学祭そのものの起源は比較的古い英国ですが、そのネットワーク化の動きは、実は比較的最近です。
 日本の日本サイエンスコミュニケーション協会(JASC)に相当する組織として、BIG(British Initiative Group)という団体があります。この BIG は科学コミュニケーション活動と手作り科学教育を守備範囲とする NPO 法人で、設立は 1992 年とまだ四半世紀ほど。その BIG の公式サイト中のこのページに、英国の科学祭の一覧があります。その総数は 34 あり、開催月毎のカレンダー形式で紹介されています。科学祭以外の内容も充実しており、全体を通読する価値は充分あります。
 この他、英国科学協会(BSA)による科学祭ネットワークとして UK Science Festivals Network という組織もあり、英国における国内各地の科学祭同士の緩やかな連合と相互発展を企図して活動しています。同団体は互助組織としての議論や能力開発のみならず、資金源や国政に対するアドボカシー活動も行っており、その展開は活発です。こちらにも英国各地の科学祭一覧があり、加盟する科学祭の総数は 32 にのぼります(一覧はこちらこちらに)。

2)米国
 米国で科学祭ネットワークと云えば、米国科学祭連盟(Science Festivals Alliance;SFA)が筆頭でしょう。
 その設立は 2009 年とかなり最近で、それまでは国内各地の科学祭自体の連携それ自体がなかったようです。元々、ある科学祭が政府の助成を得ようとした際に、単独の科学祭ではなくその連合体に対してなら助成する...という話になったのがきっかけのようで、その意味ではトップダウン型で形成されたと言えます。ただ、団体そのものはマサチューセッツ工科大学付属博物館の職員2名による任意団体で、その意味では草の根型の有志一同の延長にあるものとも言えます。2014 年現在で加盟している科学祭一覧は同年の年報に記載されており、その総数は 39(加盟者の協力する科学祭が6)にのぼります。一覧はこちら(同年版がこちらのファイル)にあります。

3)若干の考察
 英国では長い歴史のある科学祭も、地域社会への定着という観点に立つと、街興しイベントとしては恐らく後発組です。
 米国では科学祭の歴史自体が浅く、科学コミュニケーションそれ自体の重要性の認識自体が広まってきたのが前世紀末の 98 年以降で、米国史上初の科学祭の一つも 98 年に始まったようです(Wonderfest-The Bay Area Beacon of Science-...が該当)。
 何れも、国の助成を得て、大衆の科学理解(科学技術社会論の用語で、よく PUS と云われます;語源は Public Understanding of Science の頭文字)の文脈と、街興しを通じた文化的創出の両面から展開されており、そこに欧米では一般的な寄付の文化が載って持続可能性の源泉となっている場合が多そうです。
 そして、科学祭のネットワーク形成の歴史も科学祭そのものの歴史に比べれば浅く、その形成要因も英国はボトムアップ、米国はトップダウンという対比がありそうです。ただ、科学祭の担い手同士の連携に関する問題意識は恐らく元々それなりにあったと思われ、場作りの方法論に関する学びのニーズが自然発生的にあったものと推察されます。
 イベントそのものの知名度は恐らく高いと思われます。その傍証の一つになるであろう、こんな事情もあります。欧州では EuroScience Open Forum(ESOF;こちらを参照)が、米国では全米科学振興協会(AAAS)の年次総会が、各国で良く知られています。前者は欧州各国を隔年開催で、後者は北米各地を毎年開催で、何れも巡回して行われています。これらをモデルにしたイベントが、2006 年に日本で始まったサイエンスアゴラですが、ESOF を主催する EuroScience も米国の AAAS も NPO 法人であるのに対し、サイエンスアゴラを主催する日本の科学技術振興機構(JST)は国の独立研究開発法人(2015 年に独立行政法人から改組)です。
 そうした一連の事情から察するに、欧米では国策と共に市民や在野、科学研究や技術開発の当事者側の文化的な厚みがそれなりにあり、文化的営みとしての科学祭とその内容、華やかさ、持続可能性にもその厚みが大なり小なり影響している可能性が高いと思われます。しかしながら、個々の科学祭の発展そのものは地域の中で閉じており、地域の枠を超えた相互交流に関する意識は、近年になって高まってきたようで、その意識も文化的な厚みの中で徐々に醸成されてきたのかも知れません。

 第5回では、日本の理科教育と科学祭ネットワークの事情に触れて、全体をまとめます。
posted by stsfwgjp at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする