2014年09月22日

研究倫理(2):これまでの主な研究不正問題

 今年のサイエンスアゴラ・研究問題ワークショップ「本音で語る」では、研究不正問題を取り上げます。
 一歩高みに登って、問題の全体像を見ながら、何が本当の問題なのかについて考え、解探索のための模索の端緒にしたいと思います。

 前回までの記事では、理研 STAP 騒動に関して、かなり端折って振り返りました。今回は、日本と世界にある主な研究不正事件と、その構図に関して整理します。網羅的にその全てを列挙、記述、分析などすると、それだけで大著数十冊分になるため、今回は主要なもののみ取り上げます。
 一部の事例のみ簡単に列挙しておきます。興味のある方々は、是非更に調べてみて下さい。

[日本の事例]
 ・旧石器捏造事件(2000 年;旧石器発見の捏造)
 ・理研データ改竄事件(2004 年;血小板の研究で画像改竄など)
 ・阪大医学部論文不正(2005 年;内分泌研究で捏造、改竄、無許可動物実験)
 ・東大分生研不正疑惑(2005 年;RNA 干渉の研究で捏造疑惑)
 ・阪大医学部杉野事件(2006 年;生化学の捏造改竄。助手が自殺)
 ・東大セルカン事件(2010 年;経歴詐称、業績捏造、剽窃)
 ・東北大井上事件(2011 年;材料科学の論文2重投稿)
 ・東邦大藤井事件(2012 年;麻酔学の論文 172 本で捏造)
 ・ノバルティス臨床研究不正(2013 年;降圧剤のデータ改竄と利益相反)
 ・東大分生研論文不正(2013 年:画像流用、改竄、不掲載など多発)
 ・J-ADNI データ改竄疑惑(2014 年;アルツハイマーの臨床データを改竄か)

[世界の事例]
 ・パンデ事件(インド;1961 年;鶏卵中の寄生虫発見を捏造)
 ・サマーリン事件(米国;1974 年;皮膚癌移植を捏造)
 ・ルーカス事件(英国;1975 年;外科学の論文業績の捏造)
 ・スペクター事件(米国;1981 年;癌研究で捏造、経歴詐称)
 ・ボルティモア事件(米国;1986 年;免疫学の研究で捏造冤罪)
 ・ピアーズ事件(英国;1994 年;臨床事例捏造)
 ・ヘルマン・ブラッハ事件(ドイツ;1997 年;細胞生理で捏造、改竄)
 ・黄禹錫事件(韓国;2005 年;ES 細胞研究で捏造、改竄)
 ・ポールマン事件(米国;2005 年;肥満や更年期の研究で捏造、研究費申請虚偽)
 ・ムン・ヒュンイン事件(韓国:2012 年:査読偽装)

 各種の研究不正に関して、分析した事例もあります。
 JST のオンラインジャーナル「情報管理」にある松沢孝明さんの論文2報(「我が国における研究不正 公開情報に基づくマクロ分析(1)」と「同(2)」)、同人誌「IL SAGGIATORE」に掲載の菊池重秋さんの論文(「我が国における重大な研究不正の傾向・特徴を探る」)を挙げておきます。

 書物としては、「背信の科学者たち」が著名でしょう。講談社からペーパーバック版が復刊されています(こちらを参照)。他、上記のボルチモア事件が契機となって設立された米国研究公正局(ORI)のことを論じた、山崎茂明さんの「ORI 研究倫理入門」も参考になるでしょう。

 このエントリーでは、事例と分析記事の紹介にとどめます。次の記事で、研究公正を含む研究倫理の問題の所在に関して、やや包括的に述べたいと思います。
posted by stsfwgjp at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする