2012年10月30日

研究問題って何だろう?

 第1回のサイエンスアゴラから出展を続けている、研究問題ワークショップ「本音で語る」。
 その“研究問題”ってそもそも何?というのを、ここで簡単に定義し、説明したいと思います。

 我々は、以下のように考えています。
 科学研究や高等教育における影の部分、負の側面にある問題群を総称して、研究問題と呼びます。その範疇には、例えば以下のようなものが含まれます。

・科学技術政策:予算配分、研究分野の重点化、各種研究費制度など
・高等教育政策:大学院重点化、独立行政法人化、運営交付金、教育カリキュラム、各種人事政策、大学の設備や研究環境の問題、学位の定義の問題、教育理念など
・科学研究の政治経済:産学連携、知的財産権、研究費の運用、研究設備の運用や活用など
・研究倫理問題:研究不正、研究費不正、知的誠実さの問題、アカハラ・パワハラなど
・キャリア問題:ポスドク問題、若手研究者の進路設計、キャリアパス多様化、高学歴人材と企業社会のマッチングの問題など
・研究の進め方:研究室運営、研究者の人材管理、物品管理、議論の進め方、質の高い研究とは何か?など
・科学と社会の接点:生命倫理、技術倫理、研究題材の選択、科学者の社会的責任、市民参画、理科離れ問題、理科教育、科学ジャーナリズムなど

 上記の整理はあくまで一例で、記載や言及の漏れ、補足や修正の必要など多々ありうると思います。
 随時改訂していきたいと思います。

 関連する動きや取り組みは、これまでも国政レベルや有志の研究会レベルで多々ありました。
 しかし、研究問題という語を本格的に用いて活動してきたのは、生化学若い研究者の会の有志で設立した研究問題メーリングリストが、恐らく日本で最初ではないかと思います。
 この研究問題メーリングリストには、以下のような誘(いざな)いの記載があります。

 皆さんは、研究生活を送っている上で、疑問に思ったことや、不安に思ったことはありませんか? どうやったら一流の研究者になれるのだろうか、自分は研究者としてやっていけるのだろうか、留学したいんだけど、どうすればいいのだろうか・・・などなど。

 また、日本の科学政策や研究環境はこのままでよいのか、理科離れは大丈夫なのか、なんで日本人はノーベル賞が取れないのか、などと考えたことはありませんか?

 研究問題メーリングリスト(research ML)は、このような研究者をめぐる様々なことについて、情報や意見を交換する場になれば、との願いを込めて、生化学若い研究者の会の有志により開設されました(1998年2月開設)。

 研究の日常に関する身近な話題から、時には科学政策まで、幅広く話し合っていければ、と思っております。研究者は勿論、大学生や大学院生、研究者のたまごから、研究者を取材する人、研究者になりたい人、研究者にもの言いたい人・・・研究者や研究を取りまく問題に関心のある方すべてを対象にしています。ただし、一つだけ条件があります。「愚痴の言い合い」にならないこと。あくまで前向きに話し合っていきたいと思います。


 一つオマケを。
 最近では、「倫理的法的社会的問題」(ELSI;Ethical, Legal, Social Issues)という概念も徐々に普及しはじめ、認知されるようになりました。この概念は、出自としては生命科学の特にヒトゲノム計画に始まり、更に発生学(及びその延長線上に有る再生医学)、脳科学などの大型プロジェクトにおいて、生命や身体の取り扱いに関する問題として立ち現れました(例えばこちらこちらを参照)。最近はもっと幅広く、微細加工技術(ナノ技術)や各種の科学技術に適用されるべき考え方であると、徐々に認識されはじめています(例えば、こちらのシンポジウム報告(pdf 形式)に言及がある通り、平成 16 年度科学技術白書の第2章でもその意義が言及されており、更に第3期科学技術基本計画でも臨まれる取り組みとしての言及が有ります)。
 上記で挙げた整理の仕方に照らして言えば、科学技術政策、研究倫理問題、科学と社会の接点の3つの枠にまたがる問題群であると理解することが出来そうです。
posted by stsfwgjp at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月16日

【改訂版】サイエンスアゴラ出展企画 開催案内:本音で語る『専門職学位』〜薬学6年化は成功するか?〜

 開催要項を改訂しました。
 それゆえ、別エントリーにします。

 今年も 11 月 10 日(土)〜11日(日)にかけて、東京・臨海副都心の日本科学未来館とその周辺(国際研究協力大学村)にて、科学コミュニケーションの祭典「サイエンスアゴラ 2012」が開催されます。
 そして、我々も毎年恒例の研究問題ワークショップ「本音で語る」を出します。
 今年のテーマは「専門職学位」。専門家を育てる大学という場のありかたと、その社会的な影響に関して、薬学部を例にとって考えます。
 以下に、企画の概要を記します。

題 名:本音で語る『専門職学位』〜薬学6年化は成功するか?〜
出展者:横山 雅俊(市民研)、山本 伸(サイコムキャリア)
    日本薬学生連盟、#phdjp 科学と社会ワーキンググループ
関連団体:NPO 法人市民科学研究室
会場:日本科学未来館 1階 オリエンテーションルーム1
日時:11/10, 15:00〜17:00

企画趣旨:
 諸外国では、薬剤師は専門職学位として位置づけられ、教育年限は軒並み5〜6年です。その情勢に影響され、昭和の頃から続く議論を経て、日本でも2006年から薬学部は6年化されました。しかし、その経緯においては年限の根拠、教育内容、必修の臨床実習の体制整備、臨床医療以外の薬学の意義など問題が山積しており、6年化実施後もその影響は大きなものになっています。
 そうした薬学教育の問題点を直視しながら、薬学教育を実施する側、臨床医療を実施する側、教育の受け手の生の声=本音を踏まえて、今後の薬学部がどうあるべきかを考えます。
 日本の薬学部の6年化に関する議論やその社会的影響に関して、教育研究、臨床医療の当事者双方において理解が深いとは言いがたい場合が多く、更に、一般市民はその内容を殆ど知らないのが実状です。他方、意識の高い一部の薬学生は、薬学教育や薬学の今後に危機感を持っています。政策立案の過程や6年化課程開始後の経験の蓄積により浮かび上がってきた問題点やその背景を、垣根を超えて共有し、今後の薬学のあるべき姿を皆で考えていきます。主に薬学に興味ある学生、薬学の当事者を対象にしますが、意識の高い市民の参加も歓迎します。

ゲスト:
・松木 則夫さん(東京大学薬学系研究科
・鈴木 義男さん(集中出版社記者)

当日の流れ:
 前半は、お2人のゲストを招いてのトークセッションです。薬学部の置かれた現状と将来に向けての展望、そもそも薬学部が6年化された経緯にかんして、話題提供をして頂きます。また、現在、その6年制課程で学んでいる薬学生のナマの声を知り、何が本当に問題なのかを知り、共有したいと思います。
 後半は、その前半の流れを受けてのワークセッションです。参加者の気付きやひらめきを重視する「全脳思考法」という手法を用いて、問題に関する理解を深め、解決策を見つけるきっかけ作りをします。
 なお、当日ご紹介する薬学生のナマの声に関するアンケート調査の発表は、更にまとめ直したうえで、翌年の学会発表に供する予定です。

当日の進行次第(予定):

15:00〜15:05 主催者挨拶
15:05〜15:20 ゲストトーク1 松木さん:薬学教育の現状と課題
15:20〜15:35 ゲストトーク2 鈴木さん:薬学6年化の背景
15:35〜15:45 日本薬学生連盟発表:6年制薬学生の意識
15:45〜15:50 質疑
15:55〜16:50 ワークセッション(全脳思考法)
16:50〜17:00 ワークの成果発表、まとめ

 当日の企画は、皆さんの生の声や、ちょっとした興味が原動力となって動きます。
 みんなで作る、未来の科学。そのために、垣根を超えて皆が集う場が、サイエンスアゴラです。それにふさわしい企画を...と願って、毎年思いの丈を込めて出展しています。
 皆さんのお越しを、お待ちしております。そして、是非力をお貸し下さい。
posted by stsfwgjp at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする