2011年12月01日

開催報告:ワークショップ「本音で語る“夢の薬”-2010年問題をぶっ飛ばせ-」

 科学コミュニケーションの祭典「サイエンスアゴラ2011」。今年で6年目になる研究問題ワークショップ「本音で語る」。その開催報告を掲載します。

 科学と研究の世界の影の部分、負の側面に焦点を当てる研究問題ワークショップ「本音で語る」。今年は、医薬品 2010 年問題と育薬をテーマにしました。題して、「本音で語る“夢の薬”〜2010年問題をぶっ飛ばせ〜」。
 当日は記録的?な荒天という厳しい状況でしたが、延べ人数で 30 人ほどの方々にお越しいただき、当日は非常に盛り上がりました。

 当日の模様は、一昨年からこの方に twitter 生中継のご協力を戴いています。その模様を、こちらにまとめてありますので、そちらもご覧ください。

1) 当日の内容
 企画の理念その他は、こちらをご参照下さい。午後3時から産総研臨海センター本館4階会議室にて、2名のゲストを迎えて無事開催出来ました。

 ゲストは、このお2人。滋賀県からお越しのHN「薬作り職人」さんと、医療系コンサルタントで株式会社オクトエルの岩堀禎廣さん
 前半は、このお2人による対談形式にしました。対談形式は、「本音で語る」6回目にして、初めて採用。岩堀さんのパワーあふれるトークと、それに軽妙に応じて豊富な話題や論点を提供してくれる薬作り職人さん、それに丁寧で平易な解説を、比喩を交えて加えてくれる岩堀さんという感じで、それだけでもトークショーとして成り立つほど。話の概略は以下の通りです。

 医薬品の研究開発のハイリスクハイリターンぶり、それが医薬品の価格にも跳ね返り、それなしにはやっていけない製薬メーカの厳しさ。90 年代は当たり続きでバブルだった新薬開発も、今はバブル末期という状況。稀な疾患、難病の薬はなかなか作りにくい。特許で保護されている医薬品の価格も、その保護期間は正味で発売後高々 10 年程度。医薬品開発のスクリーニングは、アイドルのオーディションと同じ構図。好きなタレントに人生の4割を注ぎ込んだファンがいたとして、そのタレントにもしものことがあったら...。このタレントを薬、ファンを製薬企業に置き換えると、製薬側の医薬品 2010 年問題の説明になる。
 諸外国では、ジェネリック品(後発品)の処方割合が7割、日本では3割。それゆえ、日本で受ける以上に、いまや海外で事業展開している製薬メーカーは、この問題の影響をもろに受ける。

 トークの最中にも来場者からの割り込は想定していましたが、お2人の対談に皆さん引き込まれていたようで。
 トークがひと段落したところで、質疑応答が数件。

 それを経て後半は全脳思考法を用いたワークセッションになりました。2つの島に別れて、「どんな薬があったら良いか?」「薬にどうやって関わっていったら良いか」の2つをテーマに、作業開始。ここでしばし和気藹藹とした雰囲気に。全脳思考法は、シナリオ型の手法で、誰かを主人公にした物語を作りながら、テーマに沿った気付きを得るというものです(こちらも参照)。
 いよいよ、それぞれの島で展開された話を発表。島その1では「どんな薬が欲しいか」の話を。物語の題名は「山あり谷あり→薬で社会貢献」。キーワードは、みんなが幸せになる薬、社会に称賛されるような薬、定番、スタンダード。皆が幸せになることで、薬に社会的な称賛が得られるという物語が出来ました。ニーズと副作用の問題はあるが、社会性の高い薬が生み出され育っていくというもの。
 島その2では、「自分自身が研究開発に携わるとしたら」。10 年経ったときに携わったらという過程で、その話を1年に圧縮したが、なかなか上手くまとめきれない。物語作りを主導した島の司会役も含めて、実は研究開発のことが良く分かっていないのかも知れない。出たキーワードは、山あり谷あり、こつこつやる時間が必要、など。医療の情報を市民に伝えることの難しさもある...という話でした。

 最後に、薬作り職人さんからの簡単なコメントと、岩堀さんからの難病新薬プロジェクト(進行性骨化性線維異形成症(FOP))の紹介があり、司会の横山から薬の問題が科学と社会の接点を豊富に含む題材であることを述べて、締めにしました。

2) 得られた成果
 今年は、研究問題の題材でありながら、社会との接点が分かり易いものを選びました。とはいえ、実は身近にありながら、その認知度が決して高くないものを、敢えてこだわって選んだところもあります。
 その問題の認知が少しでも進み、その問題解決に向けて、異なるセクタの人材が交わって話し合う場を作れた(それを、科学コミュニケーションの舞台に持ってこれた)ことは、それ自体が成果だと言えると思います。
 トークセッションでの対話形式の導入、全脳思考法のワークセッションは、会場の一体感は、来場者の参画意識を促し、上手く機能したと思います。
 前半がトーク、後半がワークという形式は、第1回から踏襲していますが、この形式自体は来場者と登壇者との距離を縮めるうえでは効果的と思われます。その距離をより一層縮めて、何かを産みだせる可能性の雰囲気を作れたのは収穫の一つでした。

3) 裏話
 医薬品関係の題材をサイエンスアゴラに持ち込むのは、実は3年来の悲願でした。そのために声をかけていたのが、実は岩堀さんの設立した「薬学生の集い」(現在の日本薬学生連盟)。私立大薬学部の学部生主体のインカレ組織ですが、彼等にとっても忙しい時期に声がけをするだけでも難しいのが実状でした。
 今回、岩堀さんを経由して、その関係の方々を巻き込むことが出来て(事前打ち合わせでも2人、当日も1人)、当日にも会場にお越し戴き、興味も持ってもらえて、やった甲斐がありました。

4) 今後の展開
 科学研究や科学技術の負の側面、影の部分に、今後もこだわり続けていきたいと思います。
 研究問題としての今回の「本音で語る“夢の薬”」は、何らかの形でプロジェクト化して(例えば、市民研の企画としてでも)、関わるセクタの数量、関わる人数を更に増やして、第2段以降の展開を広げていきたいところです。
 そのための足場をどうやって築いていくかが、今後の課題です。
posted by stsfwgjp at 09:47| Comment(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月16日

当日用いる手法;ワークショップ「本音で語る“夢の薬”-2010年問題をぶっ飛ばせ-」

 今回は、ワークショップ「本音で語る“夢の薬”-2010年問題をぶっ飛ばせ-」で、当日用いる手法についてご紹介します。

 当日の前半は、2人の方に話題提供をして頂きます。
 その内容を踏まえて問題意識を共有してから、後半のワークセッションで、「全脳思考法」という、やや特殊な手法を用いて議論します。
 詳しくはこちらをご覧ください。

 概略としては、論理的思考と感性による直感とを併用しながら、特定のテーマや問題に関するシナリオを作り上げていくことを通じて、問題意識の進化や解決策の着想を得るという手法です。

 実は、今回の共同出展者の一人(山本伸こちらも参照)が、去年のサイエンスアゴラにて「科学コミュニケーションによる1億総HAPPY化計画」というワークショップを出展し、その際に今回の手法を用いています。その模様の簡単な報告が、こちらにあります。

 その時と同じ手法を、今回用います。
 その威力を、皆さんと共に実感したいと思います。
posted by stsfwgjp at 22:34| Comment(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月10日

企画の基本理念:ワークショップ「本音で語る“夢の薬”-2010年問題をぶっ飛ばせ-」

 このエントリーでは、当企画の基本理念をご紹介します。

当企画の背景
 いわゆる「医薬品2010年問題」=ブロックバスター問題が医療業界や医薬品業界で話題になって久しい。大手製薬メーカー(先発品メーカ)の稼ぎ頭である医薬品(=ブロックバスター)が続々と特許切れを迎えることにより、大手医薬品メーカは経営面の影響に危機感を募らせている。他方で、日本では国民皆保険制度の危機的状況により、政府はいわゆる後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用を推奨し、医療保険費の削減を図ろうとしている。この後発品推奨による保険医療費の削減は、保険制度に対する国民的な負担感の軽減や、医薬品の効率的利用の促進に役立つという期待がある一方で、先発品メーカーにとっては収入減につながるという危機感がある。この先発品メーカーの収入源は、そのままその先発品メーカーの新規医薬品開発のパワー低下に直結する。
 その一方で、医薬品ユーザーたる一般庶民、患者たちは、医薬品の恩恵を受ける機会を多く持ちながらも、ある時には有害副作用や薬害などに苦しめられることもあり、またある時には大規模臨床試験や実績の少ない先進医療への参画に或いは主体的に協力し、或いは悩みまた拒絶もしてきた。こうした一連の流れの中で、一般庶民や患者たちも、医薬品のおかれた科学的な事柄や、医療経済の現状に囲まれながら、日々生活している。
 ところで、こうした医薬品をめぐる構造的な問題を、製薬の研究及び開発、臨床医療、一般ユーザの間で共有する動きは、これまで殆ど無かったと思われる。特に、医薬品開発の困難、薬の効き方のからくりと安全性の問題に関して、セクタの枠を超えて同じ問題と向きあう試みは稀であった。
 最近打ち出された概念に、「育薬」というものがある。製薬の研究及び開発、臨床医療、一般ユーザ(庶民、患者)など、それぞれのセクタの者がそれぞれの立場で医薬品を使いやすく、有効で安全なものにしていく取り組みを総称したものだ。基本的には、既に市販された医薬品に関しての市販後の取り組みを指す場合が多いが、開発途上の新薬も含めて考えれば、この概念は知の成果としての医薬品を社会の財産として共有し育てていくという意味で、科学研究への市民参加という文脈を持ちうる。
 よりよい薬を作り、よりよい薬の使い方を考えていくうえでは、専門家の努力だけでは足りない部分が必ずある。それは、医薬品の歴史をひも解いてみれば、不幸な有害副作用や薬害の事件などの蓄積、或いは難治疾患を克服してきた実績の蓄積などを通じて、大なり小なり見えてくることだ。しかし、そのこと自体は、社会的な公共知としては充分に認知及び共有されてはいないのではないだろうか。

当企画の目的
 以上の背景を踏まえて、医薬品を巡る現状や、その開発及び使用に関する難しさの問題を共有しながら、セクタを超えてまず共有する。更に、新しい医薬品を作っていくうえでの難しさや、医薬品の使い方の難しさの本質が何であるのかに関して、それを解決するためのヒントを、垣根を超えて共に考え、問題と向きあうための対話を行い、新たな科学的技術的な革新に結びつけるためのヒントを手に入れることを目指したい。
posted by stsfwgjp at 08:41| Comment(0) | 科学・技術・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする